☆谷川岳☆~素人登山者 魔の山へ行く~
2016年8月14日、群馬県と新潟県の間にある谷川岳に登ってきました。
登山を始めてたったの4カ月余り。恐れを知らない素人登山者が今回登ることとなるのは、遭難死者数がぶっちぎりで世界ワーストワンの山。
“魔の山”“人食い山”等の異名を持っており、RPGとかで言ったら、ラスボスとかが出てきてもおかしくない、高レベルなダンジョンに設定されてそうです。
今回は無謀にも、日本三大急登と呼ばれる西黒尾根コースから、素人登山者が魔の山の登頂を目指します。
まだまだ浅い僕の登山経歴ですが、正直今まで行った登山の中で一番キツかったのはどこか? と聞かれたら、たぶんこの谷川岳であったと思います。
飲み会明けの早朝出発、襲い掛かるモンスターに、馬鹿みたいに暑い尾根歩き。様々なトラブル要素が折り重なった、グダグダな谷川岳クエスト開帳です。
波乱のはじまり
谷川岳に行く三日前の8月11日は、休日制定されてから初めての「山の日」ということで、日光男体山に登ってきました。
そして前日は、高校時代の友人たちとの飲み会。別に何も考えていなかったわけじゃありません。あるじゃないですか! 冒険に行く前に、酒場で情報収集的なRPGとかでよくあるやつ! 沖縄料理の居酒屋で。
よく一緒に登るHRS君に、明日 谷川岳へ行こうと誘ったら、当然のように断られました。
彼が頭に付けているハイビスカスは、たぶん防御力が上がるアイテムか何かです。
というわけで、魔の山攻略にあたり、パーティーメンバーは自分ただ一人。もはやパーティーでも何でもありません。仕方がないので、ドラ〇エやF〇じゃなく、ゼル〇の伝説みたいな冒険を目指します。
24:00頃、泡盛を飲んでベロンベロンの状態で帰宅。登山当日は4時起きと、我ながら素晴らしいスケジューリングです。登山をなめています。
男体山にも登れたし、谷川岳も余裕だろ! という根拠のない自信がどんどん魔の山のハードルを上げていきます。
新幹線で谷川岳へ
6:30 東京駅から上越新幹線MAX谷川に乗って、谷川岳へ。お誂え向けです。
谷川岳まで電車で行くとしたら、最寄り駅は、日本一のモグラ駅と呼ばれる土合駅です。しかし、高崎から上越線に乗り換えて時間もかかるので、今回はパスで。
新幹線が直接止まる上毛高原駅まで行けば、直行便のバスがあります。それが一番楽な行き方でしょう。
地方のローカル線を愛する人は多いと思います。が、千葉の田舎育ちである僕は、遅くて中々来ない地方のローカル線に、何の感慨もありません。
案の定、今回も帰りに上越線に酷い目に合わされます。それはまた後で。
7:50 上毛高原駅に着いて、谷川岳ロープウェイ行きのバスに乗ります。繁忙期だけあって、増発便もありました。ここから約1時間くらいバスに乗ります。
8:45頃、ロープウェイ乗り場のある谷川岳ベースプラザ到着。
帰りはロープウェイでここに戻ってきます。お土産などもここで購入できます。
“熊 出没してます!”の貼り紙が、“ビール、冷えてます!”くらいのノリに見えてしまうのは、おそらく僕だけでしょうか。
ロープウェイの最終時間を確認。これを逃すと、天神平から歩いて下りる羽目になります。
いざ、魔の山へ!
今日のルートはこんな感じです。これだけ見れば、そこまで大変そうには感じません。 さあ、谷川岳ダンジョン攻略開始です!
ここから先は、勇気ある冒険者のみ進むことを許された魔の山への入口。気を引き締めて、登山口へ向かいます。
9:10 はいはい、ここが地獄の一丁目。日本三大急登に数えられる西黒尾根の登山口です。
この時、まだ僕はこの山の本当の恐ろしさを理解していなかった・・・。
蒸し暑い樹林帯を登って行きます。早く見晴らしの良いところに出たいと思いながら、淡々と進みます。
モンスターの襲来!
いつものように、ボーっと登山道を進む僕は、ここが魔の山(ダンジョン)であることを忘れていたのかもしれません。ダンジョンのお約束と言えば・・・そう、モンスターの出現です。
余計なフラグを立ててしまいました。どこからともなく耳障りな重低音が聴こえてきます。
ある意味、山では熊以上に会いたくないモンスターです。
この日の谷川岳は、スズメバチ(たぶん)のエンカウント率がすこぶる高く、ダンジョン攻略を目指す僕の行く手を阻みました。
スズメバチの習性をよく知っている方であれば、この時の僕のような選択はしなかったでしょう。
スズメバチは黒いものと速く動くものに反応するので、走って逃げれば、当然追いかけてきます。飛ぶ速さもスズメバチの方が早く、どんなに走っても、すぐに回り込まれました。
(※善良な登山者の方は真似しないで下さい。スズメバチに遭遇した場合は、刺激しないよう姿勢を低くし、様子を見てゆっくりと後退しましょう。「たたかう」は論外です。)
走って逃げたあげく、回り込まれて転倒。幸運にもスズメバチはどこかに飛んで行き、怪我もしませんでしたが、選択を誤った僕は、大きな代償を払う羽目になりました。
「ハチ野郎め、今回はこのくらいで勘弁しといてやるぜ・・はあ・・はあ・・・!?」
何か視界が霞むような気がします。おかしいな、と目に手をやると・・・。
・・・あれ・・(;3 д3)・・?
メガネが・・ない。
転んだ勢いで、僕のメガネは遥か彼方、崖下へと飛んで行ってしまったようです。
ああ、僕のオリバーピープルズが・・・。
鎖場と灼熱の尾根道
モンスターとの戦闘で、予想外に体力を消費した僕は、苦楽を共にしたメガネの犠牲もあって、何とか森林限界を突破します。
やっと見晴らしの良い道にでたなと思ったら、おもいっきりガスってました。しかも、陽ざしだけはその間を縫って地表に届いていたので、「むあっ」とした嫌な暑さを感じました。魔の山攻略の試練はまだ始まったばかりです。
はあ・・はあ・・・。魔の山め、中々やるじゃないか。だが僕はまだ本当の力の半分も出しちゃいない・・・はずだ。
鎖場出現・・・え?
鎖場って聞くと、何だか楽しそうですが、ほぼ垂直な崖に申し訳程度に鎖がぶら下がっていました。
・・・はあ・・これを登るのか・・。
幸い自分は、高所恐怖症というわけではないので、あまり恐怖は感じませんが、ただでさえ体力をいつもより消耗していたので、堪えました。
暫く行くと、ガスが晴れてきて、周囲の山々が姿を現します。
楽ではないコースですが、この景色は圧巻でした。しかもこの高度感。
足を踏み外せば、大怪我じゃすまないやせ尾根の道に、若干ビビりました。
それでもガスがかかったり、抜けたりを繰り返します。
またも鎖場出現。そういえば、どこら辺が急登なのかと思ってましたが、つまりこういうことなんですね。
所々雲が晴れて、絶景が顔を覘かせます。ただ、晴れてくるのに比例して暑くなっていくので、複雑な気持ちだったりします。
ラクダの背
11:15 休憩を挟みながら、しばらく進むと、ラクダの背に到着しました。
ここがセーブポイントです。
ここまで来れば、もうすぐだ♪ と安易に考えていましたが、ここからが長かったように思います。
あと、ここで別のルートと合流するはずなんですが、そんなのあったかな?
雲の向こうに、まだまだ道が続きます。あの上が頂上・・・のわけないか。
アザミ・・・ですかね? 足が重いので、写真でも撮って休憩です。
ツルツル滑る岩場の道。注意しながら進まないと危ないので、余計に体力を吸い取られます。そして暑い!
そしてダメ押しの鎖場。
もうこの頃になると、体に直射日光があたるようになってきて、暑さと疲れで虫の息でした。
目の前に見える山を越えても、また次の山が現れます。ラクダの背というのは、よく言ったものです。
永遠に終りがないのが終わり。それが、ラクダの背・・・違うか。
段々それらしい雰囲気になってきました。いつもより休憩を多く取りながら進みます。
挨拶以外はあまり他の登山客に話しかけない僕ですが、この日ばかりは、「あとどれくらいですか?」と疲労のあまり聞いてました。
結構ガスも晴れつつありました。歩いて来た道を振り返ります。
いよいよダンジョンも後半です。もうヘロヘロな体に鞭打って、先を進みます。
切り立った岩肌。2000m未満の山ですが、高山を想起させる雰囲気を持っています。
時間は既に12:50 ようやく頂上らしきものが見えてきました。
もう歩きたくない・・・。
頂上に地下ずくに連れ、どんどん景色が開けてきます。気付けば、雲海が広がっていました。
ガスってるのはダメだけど、雲海はOK! ・・・僕らの勝手な都合です。
向こうの方に、天神平からのコースを歩いてる人たちが見えます。
自分が疲労困憊だったからか、凄く楽しそうに見えてしまいました。
頂上近くの草原にひっそり建つのは、肩の小屋です。宿屋で休憩していきたい気分ですが、時間も押してるので、先へ進みます。
谷川岳山頂 トマの耳とオキの耳
13:00 たっぷり4時間近くかけて、何とか山頂に到着しましたが、谷川岳には「トマの耳」と「オキの耳」という二つのピークがあります。一つ先の「オキの耳」まで行かないと、最高峰に立ったことになりません。
“魔の山”と恐れられる谷川岳ですが、以外にもファンシーな猫耳の持ち主だったのです。
あっちの頂上が、オキの耳です。ここから10分くらい歩けば着きますが、もう限界です。とりあえず、ここで昼休憩を取ってから、あっちに向かうことにしました。
山のお供のカップめん。友人と登る時は、ストーブを持って行きますが、一人の時は登山用の水筒にお湯を入れてきた方が楽です。
疲れた体にカップめんの塩分が浸透していきます。
小さい頃、体のことを考えて、うちの親はあまりカップめんを食べさせてくれませんでした。その影響か、親の目を盗んで食べるカップめんに危険な魅力を感じ、好きな食べ物は? と聞かれたら、「カップラーメン!」と答えていた時期があります。
コーヒーを飲んだら、オキの耳へ出発です。
13:57 谷川岳の最高峰、オキの耳到着です。たった10分足らずの道のりでしたが、疲労の為か、えらく大変に感じました。
これで魔の山、谷川岳にはれて登頂ですv しかし、下山するまでが登山。まだまだクエストは続きます。
凄い高度感。足を踏み外せば最後、一発ゲームオーバーです。
断崖絶壁に立って記念撮影。自撮りです。せっかく撮ったのに、またガスが出てきて景色がぼやけてます。メガネがないので、僕の視界もぼやけたままです。
この頃は、一人で行ってもこうやって自撮りしてましたが、最近は面倒になってやってません。周りの視線も気になるし・・・。
一ノ倉方面。谷川岳は、ロッククライミングの名所で、映画の舞台にもなっています。遭難死者数が多いのも、そっちやる人たちの方ですかね?
はるばる千葉県から魔の山へ。ちなみに、チーバ君を犬だと思っている人が多いと思いますが、正しくは、“千葉に住む不思議な生き物”です。
ムーミンのことをカバだと思ってた人は多くありませんか? あれもカバではなくて“妖精”らしいです。同じカテゴライズですね。
天神尾根とロープウェー
14:13 さあて、時間も時間なので、そろそろ帰りますか。帰りのバスの時間もありますしね。
登山とはつまり、“公共交通機関との戦い”なのです。
ここから帰るには、またトマの耳を登らにゃいけません。この小さな登り返しが、疲れた体には非常にきつかったりします。
天気は凄く良かったとは言えませんが、それでも谷川岳からの景色は圧倒的絶景だったと思います。
僕の登山歴などたかが知れていますが、谷川岳の景色は今までの登山の中でもトップクラスでした。登りがきつかった分、ご褒美も大きかったです。
猫耳山頂に別れを告げ、ロープウェー乗り場のある天神平を目指します。
西黒尾根に比べてしまえば、天国みたいな道です。こっちの道なら、登山初めてとかの人でも普通に登ってこれそうだな。
※初心者は西黒尾根ルートを下山に使わないようにとの注意書きがありました。まあ、僕もあの道を下りたいとは思えません。
尾瀬みたいな木道に出ました。天神尾根ルートはかなり整備されていて、お手軽に魔の山へ登頂できます。
ロープウェーの駅が見えてきました。あそこまで行けば、ロープウェーに乗って下まで下りられるので、事実上ダンジョンクリアです。
15:50 ロープウェー駅に到着しました。ここでダンジョンクリア・・・にしておきましょう。
特徴的な谷川岳の猫耳を眺めて、萌え~な気分に。
谷川岳ロープウェーに乗って、出発地の谷川岳ベースプラザへ。無事バスに乗り込みましたが、まだ大事なイベントを残しています。そう、温泉です!
温泉と悪夢の地方ローカル線
谷川岳の帰りに温泉に入るには、水上駅まで行かないといけません。
バスで水上駅に着き、温泉街で日帰り入浴ができる場所を探します。
もう覚えていませんが、歩いて10分くらいのところにある小さな旅館の浴場で汗を流しました。しいて言うなら、露天風呂さえあればな・・・。
風呂上がりにかき氷を食べていきました。ブルーベリーか何かだったかな? 今流行りのふわふわの氷のやつです。
少し涼んでから、水上駅へ帰ります。水上駅の周りは、如何にも温泉街といった感じで、駅前のお店はすべて閉まっていて閑散としてました。もう、遅いですからね。
この後、コンビニ一つない水上駅で、上越線をひたすら待ったという記憶が残ってます。今時刻表を見ると、決してそうでもないのですが、体感で2時間は待たされたような気がします。遅延でもしてたんですかね?
うちの地元のローカル線も、通勤時間帯以外は通常1時間に1本というゆとりダイヤで、他の線から乗り継ぐ際は鬼門とされていました。
駅で永遠と待たされるは、蚊にさされるは・・・僕が地方ローカル線を好きになれないのは、あまり良い思い出がないからです。
その後、上越線で高崎駅へ。新幹線で東京を経由し、千葉へ帰りました。
魔の山攻略を終えて
今回は、谷川岳の登山をダンジョン攻略に準えて記事を書いてみました。
元々アンチスポーツであった僕は、登山をスポーツだとは思っていません。旅・・というのも、僕には少し違うのかもしれません。
じゃあ何かと聞かれたら、答えに困りますが、今回のような「冒険」だとか「ダンジョン攻略」だとかが一番それに近いような気がします。
「次はあの山(ダンジョン)を登って(攻略して)みよう」と思うと、何だか子供の頃にゲームをやっていた時のわくわく感が蘇ってくるようです。
結局、家から出てもゲーム脳な自分なのでした。