素人登山者の山行クロニクルズ

アウトドアとは無縁な生活を送っていた引きこもり系会社員が、何を血迷ったか、登山にハマってしまいました。
主に素人登山者の行く、素晴らしき登山(珍道中)の記録です。

☆富士山☆~日本人の心に聳える 頂点の山へ(後編)~


 皆さんこんにちは。いよいよ富士登山編、試練の2日目スタートです!



 9/9~9/10にかけて、山開き最終日に日本の象徴、富士山の登頂を目指す僕とHRS君。既にHRS君は高山病にかかっており、僕らの行く手に暗雲がたちこめます。



雨の日の出発



 中世の奴隷船みたいに登山者が枕を並べる満員の山小屋で、何とか数時間の睡眠を取ることができた僕は、友人のHRS君の声に目を覚ました。
 高山病なのに眠ってしまった彼は、横になっているのも苦痛なほどの頭痛に目を覚まし、もう寝付くことができなかった。山小屋の従業員の助言に従い、HRS君は仕方なく、既に消灯している山小屋の休憩所で水を飲み、深呼吸しながら休んでいたのだ。


 「下でやすんでたら、だいぶ良くなった」


 HRS君の言葉に胸を撫で下ろしつつ、僕は既に周囲の登山者が出発の準備をし始めているに気が付いた。
 深夜1:15となり、寝室の電気が点けられと、山小屋の従業員がご来光目当ての登山者へ大きな声で呼びかける。


 「山頂でご来光を見たい方は、1:45には出発して下さい!」


 起きて、いよいよ山頂を目指そうと出発の準備に取り掛かる僕のはす向かいで、今起きたばかりの年配の白人男性登山者へ、別の外国人登山者が困った様子で声を掛けた。


 「イッツ・レイニー」


 それを聞いた年配の白人登山者は、驚いた様子で振返り、いぶかし気に答えた。


 「レイニー!?」


 僕はこの瞬間、自分の拙い英語力では、彼らの会話をきっと聞き取れていないのだと思いたかった。しかし、中学生でも理解できそうなその外人同士のやりとりは、僕らに悲しい現実を突きつけるのであった・・・。



 回りくどい小説風な前置きをしてしまいましたが、僕が何を言いたかったのかというと・・・。




 雨です!!



 山の天気は変わりやすいとは、よく言ったものですが、今回雨に降られるとは、正直予想していませんでした。
 皆上下レインウェアを着ているのは、最初防寒の為だと思いましたが、外に出ると結構な勢いで降ってました。


 とりあえず、僕とHRS君も上下に雨具を着て、昨晩支給された弁当(おいなりさん)を食して、他の登山者同様、ご来光を見に出発です。


 2:00 いよいよ出発します。幸い、雨もだいぶ小降りになってきました。





 雨の中の行軍スタート。ご来光目当てに皆が一斉に出発する為、深夜にも関わらず、登山道は大渋滞です。



 道を埋め尽くすヘッドライトをつけた登山者が、幻想的な光の列となって山頂へと伸びていきます。



 雨の中進むこと、約3時間・・・



日本の頂へ

 
 4:53 何とか夜明け前に山頂へ到着。なんだかHRS君の表情が芳しくありませんが・・・。



 人のひしめく山頂でお互い記念撮影。



 山頂は沢山のご来光待ちで、ひしめき合ってます。


 さあ・・・いよいよご来光の時間です!




 ・・・



 ・・・



 ・・・ん?


 





 ・・・あれ?





 日の出・・は・・・?





 見え・・ない?



 





 そりゃ、雨が降ってたくらいですので、晴れているわけがありません。
 かろうじて、薄っすらと山の下の灯かりが見えるくらいです。



 そして朝の山頂の冷え込みが、容赦なく僕らの体温を奪っていきます。
 フリースを着て、上下雨具、グローブを付けていても手がかじかんできます。


 ここで、富士山における第4の注意点、“寒さ”です!


 早朝の富士山頂とか、夏なのに最早冬山です!
 ※雨が降ってなければ、軽量のダウンを持っていきましょう。




 こんな天気では仕方がありません。さっさと、最高峰の剣ヶ峰に行って、お鉢巡りでもして下山することにしましょう。



 そう言って、僕がHRS君に声を掛けたその時でした。




 彼の様子が明らかに変です。







 そうです・・・。
 疲れと寒さで、もうよくわかりませんでしたが、彼の高山病はとっくに再発していました。




 HRS君・・・ここで無念のギブアップです。




 結局、お鉢巡りとHRS君を天秤にかけた結果、僅差で下山することにしました。



下山と無限ループ地獄



 5:36 名残惜しいですが、下山開始です。
 下山はジグザグしたブルトーザー道とかいう広めの道を使いました。
 寒さの為、氷柱ができてました。HRS君に教えてあげます。



 「見て見て! 氷柱ができてる!」




 仕方がないので、先を進みます。



 あれあれ、少し進むと景色が開けてきました!
 皆足を止めて、景色を眺めています。そして僕らも・・・。





 「晴れてきたみたいだから、少し見ていこうよ!」





 彼も大変そうだし、足を止めて、しばし景色でも楽しみましょう。



 今まさに登ったばかりの日の光が、雲海の向こうの空を幻想的に照らし出していました。
 ちゃんとしたご来光は見られませんでしたが、これはこれで絶景でした。



 高山病バリバリのHRSさんも、ご満悦!



 高山病で虫の息であった、HRS君の体に鞭打って、写真を撮って貰いました。
 みんな逆光です。


 景色は良くなってきましたが、このジグザグの下山道は単調過ぎて、地獄の無限ループです。



 HRS君も少し元気になってきたかな・・・?



 疲れと高山病で、HRS君の体力はつきかけていました。
 彼のペースに合わせて、休み休み進みます。



 ここまで悠々と進んで来た僕でしたが、僕の体にもある異変が・・・。


 い、いかん・・・これは一番まずいやつだ!


 ・・・トイレに行きたい!


 そういえば、山小屋を出てから、トイレに行ってません。高山病対策で、水分を多めにとっていたことが裏目に出てしまいました。
 HRS君も実は我慢している様子・・・。


 しかし、地図を見て見ると、7合目の公衆トイレまでトイレはありません。


 こ、これは・・・いや、





 登りに比べ、圧倒的にトイレの少ない富士山の下山道。
 携帯トイレも持ってましたが、物影の全くない富士山の下山道で使うことは不可能です。



 徐々に高まっていく尿意を堪えながら、無限に続くかと思われる地獄のジグザグループをひたすら進みました。



 緊急避難小屋へ到着。いっそうのこと、この中で携帯トイレでも使おうかと思いましたが、我慢。


 しかし、僕らの膀胱は破裂寸前です。




 もうダメかも・・・。






 そして・・・。






 8:13 ようやく、7合目公衆トイレに到着です。ただのトイレなのに、もはやオアシスです。
 ここでしばしの休憩。山頂からそのままの格好で下山してきたので、結構汗をかいていました。雨具を脱いで、行動食を取ります。
 さすがに、ここまでくれば、HRS君の高山病も一段落・・・。




 後は、ひたすら5合目を目指して進みます。
 ここで、今晩何を晩餐にするかで、僕らは話し合っていました。


 「とりあえず肉だろ」
 「そうだね肉だね」
 「肉っていったら、何があるかね。焼肉? ステーキ?」
 「焼き鳥ってのもあるけど」
 「いやいや、普通肉を食べようって言って、焼き鳥はないでしょ?」
 「それはおかしい! 焼き鳥だって肉料理じゃないか!」
 「それはあれだよ、焼き鳥はどちらかというと酒の肴的な感じだからじゃないかな?」
 「そ、そうか!? 焼肉やステーキはそれ自体でメインになり、それを目的に食べに行くことが多いが、得てして焼き鳥は、飲み屋に行く際の選択肢として考えられることが多い! そういうことだったのか!」


 ・・・二人とも納得。


 毒にも薬にもならない与太話をしている間に、ゴールへ近づいていきます。



 「ところで、ハンバーグは肉を食べたい時の選択肢になるのかな?」
 「それは違うよ。魚を食べようって言って、おでんを食べるようなものさ」
 「なるほど、加工品繋がりってわけか!」


 どうしようもない、未婚30代男子の拙い会話でした。
 僕らが結婚できない理由を何となくご理解頂けたかと思います。



 9:23 そんな馬鹿話をしている間に、5合目に到着しました。
 僕らの前に馬車が走っていますが、5合目の少し手前から乗ることができます。


 だけど料金は2000円です。


 HRS君「乗りません!」※即決





 お土産を買って、いらない荷物と一緒に郵便局からゆうパックで送りました。
 身軽になったところで、お昼ごはん!


 富士山名物 富士山噴火カレー です。


 本当に富士山が噴火して、死者でも出ようものなら、こんなメニュー出せなくなるんだろうな・・・。


 ずっとぶら下げていたのに、存在を忘れていたチーバ君を申し訳程度に撮っておきます。


 11:30 バスに乗って、富士山に別れを告げました。




長い長い帰り道



 12:24 懐かしの河口湖駅に到着。



 去年、三つ峠山に登った帰りに寄った、ほうとう不動。こんなに混むんですね。
 そういえば、あの時もHRS君と一緒でした。




 ちょっとバスに乗って、河口湖の辺にある日帰り温泉へ。
 ここにも去年来たし。





 二日分の汗を流し、バスに乗って再び河口湖駅へ戻ります。



 とりあえず、東京まで帰ってから晩餐にすることに。
 電車かバスのどちらで帰ろうか迷いましたが、乗換のいらない楽さと、値段の安さで、今回もバスでかえることに・・・。


 


 16:30 東京駅行きのバスに乗りました。



 バスの窓からは、登ってきた富士山が見えます。

 「なんだかんだで、いい登山だったね」
 「うん」


 しかし、楽しいのはここまででした。
 皆さん、何か大事なことを忘れてないでしょうか?
 そうです、富士登山での5つの注意点です。
 もう、とっくに下山してますが、家に帰るまでが登山なのです。


 富士山における第5の注意点、それは“中央道の渋滞”です。


 帰りのバスへ乗った僕らを待ち受けていたのは、中央道名物、小仏トンネルを先頭とする、圧倒的渋滞です。
 僕らの残念無双は、まだまだ終わっていませんでした。


 日曜日✖夕方✖中央道

 それは、悪魔の方程式でした。
 当初2時間で東京駅へ着く予定が、2時間遅れ、トータル4時間ものロングクルーズとなりました。


 20:45 東京駅へ到着。せっかく早く帰れたのに、アドバンテージを全て無駄にしてしまいました。



 そして、僕らの前には、明日は仕事だという現実・・・。
 もうヤケクソの焼肉です! ヤケクソだけど焼肉です!


 
 こうして、僕らの長い長い富士登山は終わりを迎えました。
 結局、剣ヶ峰に行ったり、お鉢巡りをすることはできなかったので、できれば来年あたりまた登ってみたいです。次回は富士宮ルートとかからでもいいかもしれません。

 今回、高山病がトラウマとなって、HRS君はしばらく登山をお休みするそうです。
 でもきっと大丈夫! また来月あたり普通に登山をしていることでしょう。


 それでは皆さん、お読み頂き、ありがとうございました。










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