素人登山者の山行クロニクルズ

アウトドアとは無縁な生活を送っていた引きこもり系会社員が、何を血迷ったか、登山にハマってしまいました。
主に素人登山者の行く、素晴らしき登山(珍道中)の記録です。

☆磐梯山☆~会津磐梯山 日帰り大作戦~



 2017年5月23日、福島県の磐梯山に行ってきました!


 2017年は僕にとって、二つの目標があり、一つはアルプスデビュー。そしてもう一つは東北の山に登ることでした。


 千葉に住む僕にとって、日帰りのできる限界はどこなのでしょうか? 
 去年、磐梯山の登山を計画した際、流石に福島の山に日帰りは無理という結論に達し、登るのを見送ってました。
 今回は、本来前夜泊以上となる東北遠征を、新幹線とレンタカーという合わせ技を使い、無理矢理日帰りで行ってきました。
 交通費を惜しみなく使った、一人で行く不経済な磐梯山日帰り大作戦、開帳です。
 


はじまりの地、郡山


 朝の7:30前に郡山だと!? 一体どんなマジックを使ったんだ?
 新幹線を使ったんだ!


 ということで、今回も最寄り駅から5時過ぎの電車に乗って、はるばる福島県郡山駅までやってきました。
 失礼な話かもしれませんが、初めて来た郡山、下手な関東の都市よりも全然都会で驚きました。


 朝8:00のレンタカー屋さんの開店を待って、磐梯山のある猪苗代に出発します。
 ここから猪苗代駅までは、電車でも行けますが、そこからの公共交通機関が乏しく、ここからレンタカーで行った方が時間の融通も利いて良いと思います。
 軽自動車等であれば、4,000円前後で借りられ、下手にタクシーなどを使うよりも安上がりです。人数がいれば尚更。



磐越自動車道から磐梯山へ 


郡山から今回の登山口である裏磐梯スキー場までは、高速を使って一時間ちょっと。
千葉に住んでいる僕にとって、まあ使うことのない磐越道に乗って、猪苗代ICで降りました。



 磐梯山が見えてきました。会津富士の異名を持つその山容は、秀麗そのもの。独立峰の山は、見ればすぐにわかるので、“これからあそこに登るんだ”という冒険心をかきたてますね。


 因みに、小学生の頃、僕は一度家族と猪苗代に訪れたことがありました。
 その頃は、何故か野口 英世にハマっていて、野口 英世記念館に入った記憶があります。あれから20年・・・まさか、あの時見た磐梯山にこんな形で再会するとは・・・。
(特に大きな意味はありません)


 こちらは、表からみた磐梯山。今回はここから裏磐梯へ回り込んで、裏口入学です。




 9:44 裏磐梯スキー場に到着。結構時間をくいました。平日ということもあり、閑散としています。



今回のルートは裏磐梯スキー場登山口から時計回りで周回するコース。途中でコースから外れ、櫛ヶ峰に登りましたが、中々厄介でした。



 登山開始 西部劇のような裏磐梯


 さて、時間もないことだし、登山開始です。それにしても今回も天気は圧倒的快晴です。5月の東北ということで、少し肌寒い登山を予想してましたが、登山口からもう暑かったです。
 写真はありませんが、長袖アンダーウェアに半袖Tシャツ、サポートタイツにハーフパンツというほぼ真夏の格好でのスタート。



 リフトの横の登山道。しばらくはこんななだらかな道が続きます。



 振返ると、一際存在感のある山が。吾妻山です。最高峰の西吾妻山は、2035mと磐梯山より高いですが、“最高峰展望なし”の記載があり、少し行く気を削がれます。



 登山道を雪解け水が流れていきます。比較的水の流れが少ないところを探して進みました。




 樹林帯に入ると、見たこともない植物が群生していました。南米とかに生えてそうな植物ですが、見慣れないせいか、少し気持ち悪かったり・・。



 銅が混じっているのか、青っぽい色の沼です。段々と火山な雰囲気が強くなってきました。



 樹林帯を抜けると、どうでしょうか。表の眉目秀麗な山容からは想像もできない、粗々しい火山としての顔が姿を現します。さながら西部劇でも始まりそうな雰囲気で、とても日本の東北に来ているとは思えないです。



 そして一つだけ言っておきます。暑いです! 直に陽ざしがあたるので、実際の温度より、体感は5度くらいは増してるんじゃないでしょうか? 気分は夏山です。



 残雪です。これを見れば少しは涼し気に・・・なりません。



 裏磐梯が見えてきました。檜原湖もきれいです。



 ここらへんから傾斜がきつくなった気がしました。遠くから落石の音が度々聴こえ、多少不安になります。



 火山特有のガレ場に足を取られそうになりながら進みました。地図上の点線の道は、中々険しいです。この時くらいから、今回も登りはグダグダになりそうな予感が・・・。




 11:17 やっとのことで磐梯山本体と櫛ヶ峰の分岐点に到着。登山口から約1時間半。僕の年齢と一人であることを考えると、結構遅めなコースタイムです。登りがグダグダなのは、いつものことですけど。



櫛ヶ峰


 磐梯山とは反対に見えてくるのは、櫛ヶ峰です。地図に道はないですが、一応登山道は見えています。僕がよく見させてもらうブログでおススメとのことだったので、登らない手はありません。



 正直舐めてました。実際登ってみると結構傾斜があり、足元も滑りやすい為、予想外に体力を消耗しました。暑いし。



 11:44 櫛ヶ峰の山頂に到着です。人影かと思ったら、監視カメラでした。
 登山開始から約2時間。当初の予想に反して、体力を消耗した為、一旦ここで小休止です。写真では見えないですが、小さな虫がいっぱい飛んでます。



 眼下には大展望が広がってました。福島を代表する湖である猪苗代湖の広大さがわかります。手前のは赤埴山。残念ながら今回は行けません。



 櫛ヶ峰から見た磐梯山本体は、まだ雪化粧をしていて美しかったです。でも、この距離感をまた移動しないといけないと考えると、多少げんなり。



 裏磐梯方面も相変わらずの絶景。しかしゆっくりもしてられません。既に12時を回っている為、磐梯山を目指さなければ! やっぱり昼は山頂で食べたいじゃないですか。



 磐梯山の“ワイルド担当”、荒々しい櫛ヶ峰に別れを告げ、磐梯山の最高峰を目指しましょう。



磐梯山山頂へ



 火山ガスの注意看板がありました。安全な場所って一体・・・。



 目の前の薄茶けてる白いのは雪です。所々残雪の上を進みました。



 淡々と書いてますが、この辺になるとガス欠でヘロヘロ状態に。櫛ヶ峰で体力を使い過ぎました。更にグダグダと登って行きます。



 さっき登った櫛ヶ峰もまだすぐそこです。
 ※登山に行くときは、自分の体力に見合った計画を立てましょう。



 13:00 弘法清水小屋に到着です。僕のしがない体力は既に限界を迎えていました。とりあえず小休止、小休止!
 暑いので、ビールが飲みたかったですが、帰りも運転して帰るので、ノンアルコールビールで我慢。


 ここで磐梯山のバッジを購入しました。実は登山バッジを密かにコレクションしてます。買いそびれることも多いので、それを理由に再訪しないとと考える山が結構あったり、なかったり。



 だけどゆっくりもしてられません。最後の力を振り絞って山頂を目指さなきゃです。
 しかしその僕のなけなしのやる気も、僅か数10mで打ち砕かれます。
 あ・・足が・・・重い!



 しかし、今回のグデグデ感は去年の谷川岳以来でしょうか? 結構登山に行っているはずなのに、体力のつかない残念な自分の体。家で転んで骨折するし・・・。



磐梯山山頂



 13:29 磐梯山に何とか登頂です! 360度大パノラマの世界です。
 体感ですが、涼しさはほぼ無し。日陰があれば入りたい気分。



 初の東北の山に登頂。
 暑いですが、ここで昼ごはんです。この日の磐梯山は小さな虫が多くて食べ物を食べるのには一苦労でした。



 岡部小屋? 山頂にある謎の小屋です。僅かですが日影があったので、そこで食べることにしました。
 小屋の縁はベンチみたいになっていますが、座ったら確実に壊れるくらいの強度です。



 僕がザックにチーバ君を付けているのは、千葉に対する“郷土愛”からです。決して、いい年して鞄にぬいぐるみを付けている痛いおじさんではない・・・と自分だけは信じてます。



 裏磐梯方面。この遥か彼方には、まだ見ぬ東北の名峰が沢山あるのでしょう。
 今一番行きたい東北の山は、山形県の月山です。流石に最低でも前夜泊は必須でしょう。せっかくなので、一緒に鳥海山も登りたいですね。



 あの苦戦した櫛ヶ峰があんなに低く見えます。
 時間は14:00を回りました。これだけ遅くまで山頂にいたことは、ありません。暗くはならないにしても、早く下りないと温泉に入る時間が!



スピード下山、銅沼と温泉


 温泉に入った後に郡山へ帰ることを考えると、16:00までには駐車場に着きたいところ。コースタイムでは、駐車場まで2時間40分。登りがグダグダで会った分、この下りで取戻さないといけません。
 だけど見なきゃいけないとこは、しっかり見ていきます。



 登りと違い、樹林帯の中の単調な道をひたすら進みます。途中に雪のトラップがあったりしますが、比較的楽ちんな道です。



 15:32 あれよあれよという間に銅沼へ到着しました。ここが下りのハイライトでしょう。



 飲んだら体に悪そうな色ですが、磐梯山とのコントラストがとても綺麗でした。本当にここが日本かと見紛う景色です。
 ゆっくり見惚れているわけにもいかないので、先を進みます。



 ゲレンデの先にスキー場の建物が見えてきました。ここまで来れば、ゴールはあと少し。大体16:00頃には駐車場に到着できましたと。


 車に乗り込んだら、今日の日帰り温泉を目指します。少し離れますが、郡山へ帰る道すがらのホテルリステル猪苗代で汗を流していきました。



 洋風なスパ施設といった感じですが、露天風呂もあり、中々くつろげました。
 たまにはこういうのもいいかも。



日帰り登山のボーダーライン


 今回は、初の東北遠征ということで、磐梯山への日帰り登山をやってみました。南関東に住む僕にとっては、この辺が日帰りできるボーダーラインでしょう。


 磐梯山は表と裏の顔があり、その変化に富んだ山容はとても興味深く、美しかったです。人間だったら、表と裏のギャップがあり過ぎて、結構やばい人かもしれません。


 節操のない登山だったので、もっと観光などをして福島を満喫したいという方には決しておススメできるものではありませんが、今回の登山で僕の行動範囲は飛躍的に広がりました。天気によって行くところを変えられるので、僕的には万々歳です。
 しいて問題があるとすれば、そんな節操のない登山を、しかも平日に誰が付き合ってくれるのかということくらいでしょう。


 それから僕は、6月に日帰りで越後湯沢まで行き、谷川連峰の平標山・仙ノ倉山を。その後には、深夜バスで盛岡まで行き、早池峰山に登ることになります。
 いつもの平日ぼっち登山だったのですが、それはまた別の機会に。

☆谷川岳☆~素人登山者 魔の山へ行く~


 2016年8月14日、群馬県と新潟県の間にある谷川岳に登ってきました。


 登山を始めてたったの4カ月余り。恐れを知らない素人登山者が今回登ることとなるのは、遭難死者数がぶっちぎりで世界ワーストワンの山。
 “魔の山”“人食い山”等の異名を持っており、RPGとかで言ったら、ラスボスとかが出てきてもおかしくない、高レベルなダンジョンに設定されてそうです。


 今回は無謀にも、日本三大急登と呼ばれる西黒尾根コースから、素人登山者が魔の山の登頂を目指します。
 まだまだ浅い僕の登山経歴ですが、正直今まで行った登山の中で一番キツかったのはどこか? と聞かれたら、たぶんこの谷川岳であったと思います。


 飲み会明けの早朝出発、襲い掛かるモンスターに、馬鹿みたいに暑い尾根歩き。様々なトラブル要素が折り重なった、グダグダな谷川岳クエスト開帳です。



波乱のはじまり

 
 谷川岳に行く三日前の8月11日は、休日制定されてから初めての「山の日」ということで、日光男体山に登ってきました。


 そして前日は、高校時代の友人たちとの飲み会。別に何も考えていなかったわけじゃありません。あるじゃないですか! 冒険に行く前に、酒場で情報収集的なRPGとかでよくあるやつ! 沖縄料理の居酒屋で。



 


 よく一緒に登るHRS君に、明日 谷川岳へ行こうと誘ったら、当然のように断られました。
 彼が頭に付けているハイビスカスは、たぶん防御力が上がるアイテムか何かです。



 というわけで、魔の山攻略にあたり、パーティーメンバーは自分ただ一人。もはやパーティーでも何でもありません。仕方がないので、ドラ〇エやF〇じゃなく、ゼル〇の伝説みたいな冒険を目指します。


 24:00頃、泡盛を飲んでベロンベロンの状態で帰宅。登山当日は4時起きと、我ながら素晴らしいスケジューリングです。登山をなめています。
 男体山にも登れたし、谷川岳も余裕だろ! という根拠のない自信がどんどん魔の山のハードルを上げていきます。



新幹線で谷川岳へ





 6:30 東京駅から上越新幹線MAX谷川に乗って、谷川岳へ。お誂え向けです。
 谷川岳まで電車で行くとしたら、最寄り駅は、日本一のモグラ駅と呼ばれる土合駅です。しかし、高崎から上越線に乗り換えて時間もかかるので、今回はパスで。
 新幹線が直接止まる上毛高原駅まで行けば、直行便のバスがあります。それが一番楽な行き方でしょう。


 地方のローカル線を愛する人は多いと思います。が、千葉の田舎育ちである僕は、遅くて中々来ない地方のローカル線に、何の感慨もありません。
 案の定、今回も帰りに上越線に酷い目に合わされます。それはまた後で。



 7:50 上毛高原駅に着いて、谷川岳ロープウェイ行きのバスに乗ります。繁忙期だけあって、増発便もありました。ここから約1時間くらいバスに乗ります。




 8:45頃、ロープウェイ乗り場のある谷川岳ベースプラザ到着。
 帰りはロープウェイでここに戻ってきます。お土産などもここで購入できます。



 “熊 出没してます!”の貼り紙が、“ビール、冷えてます!”くらいのノリに見えてしまうのは、おそらく僕だけでしょうか。
 ロープウェイの最終時間を確認。これを逃すと、天神平から歩いて下りる羽目になります。


いざ、魔の山へ!



 今日のルートはこんな感じです。これだけ見れば、そこまで大変そうには感じません。 さあ、谷川岳ダンジョン攻略開始です!



 ここから先は、勇気ある冒険者のみ進むことを許された魔の山への入口。気を引き締めて、登山口へ向かいます。



 9:10 はいはい、ここが地獄の一丁目。日本三大急登に数えられる西黒尾根の登山口です。
 この時、まだ僕はこの山の本当の恐ろしさを理解していなかった・・・。



 蒸し暑い樹林帯を登って行きます。早く見晴らしの良いところに出たいと思いながら、淡々と進みます。



モンスターの襲来!



 いつものように、ボーっと登山道を進む僕は、ここが魔の山(ダンジョン)であることを忘れていたのかもしれません。ダンジョンのお約束と言えば・・・そう、モンスターの出現です。


 余計なフラグを立ててしまいました。どこからともなく耳障りな重低音が聴こえてきます。



 ある意味、山では熊以上に会いたくないモンスターです。 
 この日の谷川岳は、スズメバチ(たぶん)のエンカウント率がすこぶる高く、ダンジョン攻略を目指す僕の行く手を阻みました。



 スズメバチの習性をよく知っている方であれば、この時の僕のような選択はしなかったでしょう。



 スズメバチは黒いものと速く動くものに反応するので、走って逃げれば、当然追いかけてきます。飛ぶ速さもスズメバチの方が早く、どんなに走っても、すぐに回り込まれました。
 (※善良な登山者の方は真似しないで下さい。スズメバチに遭遇した場合は、刺激しないよう姿勢を低くし、様子を見てゆっくりと後退しましょう。「たたかう」は論外です。)


 走って逃げたあげく、回り込まれて転倒。幸運にもスズメバチはどこかに飛んで行き、怪我もしませんでしたが、選択を誤った僕は、大きな代償を払う羽目になりました。


 「ハチ野郎め、今回はこのくらいで勘弁しといてやるぜ・・はあ・・はあ・・・!?」


 何か視界が霞むような気がします。おかしいな、と目に手をやると・・・。


 ・・・あれ・・(;3 д3)・・?


 メガネが・・ない。


 転んだ勢いで、僕のメガネは遥か彼方、崖下へと飛んで行ってしまったようです。
ああ、僕のオリバーピープルズが・・・。





鎖場と灼熱の尾根道



 モンスターとの戦闘で、予想外に体力を消費した僕は、苦楽を共にしたメガネの犠牲もあって、何とか森林限界を突破します。


 やっと見晴らしの良い道にでたなと思ったら、おもいっきりガスってました。しかも、陽ざしだけはその間を縫って地表に届いていたので、「むあっ」とした嫌な暑さを感じました。魔の山攻略の試練はまだ始まったばかりです。


 はあ・・はあ・・・。魔の山め、中々やるじゃないか。だが僕はまだ本当の力の半分も出しちゃいない・・・はずだ。



 鎖場出現・・・え?
 鎖場って聞くと、何だか楽しそうですが、ほぼ垂直な崖に申し訳程度に鎖がぶら下がっていました。


 ・・・はあ・・これを登るのか・・。


 幸い自分は、高所恐怖症というわけではないので、あまり恐怖は感じませんが、ただでさえ体力をいつもより消耗していたので、堪えました。



 暫く行くと、ガスが晴れてきて、周囲の山々が姿を現します。
 楽ではないコースですが、この景色は圧巻でした。しかもこの高度感。
 足を踏み外せば、大怪我じゃすまないやせ尾根の道に、若干ビビりました。



 それでもガスがかかったり、抜けたりを繰り返します。


 またも鎖場出現。そういえば、どこら辺が急登なのかと思ってましたが、つまりこういうことなんですね。


 所々雲が晴れて、絶景が顔を覘かせます。ただ、晴れてくるのに比例して暑くなっていくので、複雑な気持ちだったりします。



ラクダの背




 11:15 休憩を挟みながら、しばらく進むと、ラクダの背に到着しました。
 ここがセーブポイントです。


 ここまで来れば、もうすぐだ♪ と安易に考えていましたが、ここからが長かったように思います。
 あと、ここで別のルートと合流するはずなんですが、そんなのあったかな?



 雲の向こうに、まだまだ道が続きます。あの上が頂上・・・のわけないか。



 アザミ・・・ですかね? 足が重いので、写真でも撮って休憩です。


 ツルツル滑る岩場の道。注意しながら進まないと危ないので、余計に体力を吸い取られます。そして暑い!



 そしてダメ押しの鎖場。
 もうこの頃になると、体に直射日光があたるようになってきて、暑さと疲れで虫の息でした。



 目の前に見える山を越えても、また次の山が現れます。ラクダの背というのは、よく言ったものです。
 永遠に終りがないのが終わり。それが、ラクダの背・・・違うか。



 段々それらしい雰囲気になってきました。いつもより休憩を多く取りながら進みます。
 挨拶以外はあまり他の登山客に話しかけない僕ですが、この日ばかりは、「あとどれくらいですか?」と疲労のあまり聞いてました。



 結構ガスも晴れつつありました。歩いて来た道を振り返ります。
 いよいよダンジョンも後半です。もうヘロヘロな体に鞭打って、先を進みます。



 切り立った岩肌。2000m未満の山ですが、高山を想起させる雰囲気を持っています。



 時間は既に12:50 ようやく頂上らしきものが見えてきました。
 もう歩きたくない・・・。



 頂上に地下ずくに連れ、どんどん景色が開けてきます。気付けば、雲海が広がっていました。
 ガスってるのはダメだけど、雲海はOK! ・・・僕らの勝手な都合です。



 向こうの方に、天神平からのコースを歩いてる人たちが見えます。
 自分が疲労困憊だったからか、凄く楽しそうに見えてしまいました。



 頂上近くの草原にひっそり建つのは、肩の小屋です。宿屋で休憩していきたい気分ですが、時間も押してるので、先へ進みます。



谷川岳山頂 トマの耳とオキの耳



 13:00 たっぷり4時間近くかけて、何とか山頂に到着しましたが、谷川岳には「トマの耳」と「オキの耳」という二つのピークがあります。一つ先の「オキの耳」まで行かないと、最高峰に立ったことになりません。


 “魔の山”と恐れられる谷川岳ですが、以外にもファンシーな猫耳の持ち主だったのです。



 あっちの頂上が、オキの耳です。ここから10分くらい歩けば着きますが、もう限界です。とりあえず、ここで昼休憩を取ってから、あっちに向かうことにしました。



 山のお供のカップめん。友人と登る時は、ストーブを持って行きますが、一人の時は登山用の水筒にお湯を入れてきた方が楽です。
 疲れた体にカップめんの塩分が浸透していきます。


 小さい頃、体のことを考えて、うちの親はあまりカップめんを食べさせてくれませんでした。その影響か、親の目を盗んで食べるカップめんに危険な魅力を感じ、好きな食べ物は? と聞かれたら、「カップラーメン!」と答えていた時期があります。


 コーヒーを飲んだら、オキの耳へ出発です。



 13:57 谷川岳の最高峰、オキの耳到着です。たった10分足らずの道のりでしたが、疲労の為か、えらく大変に感じました。
 これで魔の山、谷川岳にはれて登頂ですv しかし、下山するまでが登山。まだまだクエストは続きます。



 凄い高度感。足を踏み外せば最後、一発ゲームオーバーです。



 断崖絶壁に立って記念撮影。自撮りです。せっかく撮ったのに、またガスが出てきて景色がぼやけてます。メガネがないので、僕の視界もぼやけたままです。


 この頃は、一人で行ってもこうやって自撮りしてましたが、最近は面倒になってやってません。周りの視線も気になるし・・・。



 一ノ倉方面。谷川岳は、ロッククライミングの名所で、映画の舞台にもなっています。遭難死者数が多いのも、そっちやる人たちの方ですかね?



 はるばる千葉県から魔の山へ。ちなみに、チーバ君を犬だと思っている人が多いと思いますが、正しくは、“千葉に住む不思議な生き物”です。
 ムーミンのことをカバだと思ってた人は多くありませんか? あれもカバではなくて“妖精”らしいです。同じカテゴライズですね。



天神尾根とロープウェー



 14:13 さあて、時間も時間なので、そろそろ帰りますか。帰りのバスの時間もありますしね。
 登山とはつまり、“公共交通機関との戦い”なのです。


 ここから帰るには、またトマの耳を登らにゃいけません。この小さな登り返しが、疲れた体には非常にきつかったりします。



 天気は凄く良かったとは言えませんが、それでも谷川岳からの景色は圧倒的絶景だったと思います。
 僕の登山歴などたかが知れていますが、谷川岳の景色は今までの登山の中でもトップクラスでした。登りがきつかった分、ご褒美も大きかったです。



 猫耳山頂に別れを告げ、ロープウェー乗り場のある天神平を目指します。
 西黒尾根に比べてしまえば、天国みたいな道です。こっちの道なら、登山初めてとかの人でも普通に登ってこれそうだな。
 ※初心者は西黒尾根ルートを下山に使わないようにとの注意書きがありました。まあ、僕もあの道を下りたいとは思えません。



 尾瀬みたいな木道に出ました。天神尾根ルートはかなり整備されていて、お手軽に魔の山へ登頂できます。



 ロープウェーの駅が見えてきました。あそこまで行けば、ロープウェーに乗って下まで下りられるので、事実上ダンジョンクリアです。



 15:50 ロープウェー駅に到着しました。ここでダンジョンクリア・・・にしておきましょう。
 特徴的な谷川岳の猫耳を眺めて、萌え~な気分に。



 谷川岳ロープウェーに乗って、出発地の谷川岳ベースプラザへ。無事バスに乗り込みましたが、まだ大事なイベントを残しています。そう、温泉です!



温泉と悪夢の地方ローカル線


 谷川岳の帰りに温泉に入るには、水上駅まで行かないといけません。
 バスで水上駅に着き、温泉街で日帰り入浴ができる場所を探します。
 もう覚えていませんが、歩いて10分くらいのところにある小さな旅館の浴場で汗を流しました。しいて言うなら、露天風呂さえあればな・・・。



 風呂上がりにかき氷を食べていきました。ブルーベリーか何かだったかな? 今流行りのふわふわの氷のやつです。
 
 少し涼んでから、水上駅へ帰ります。水上駅の周りは、如何にも温泉街といった感じで、駅前のお店はすべて閉まっていて閑散としてました。もう、遅いですからね。
 
 この後、コンビニ一つない水上駅で、上越線をひたすら待ったという記憶が残ってます。今時刻表を見ると、決してそうでもないのですが、体感で2時間は待たされたような気がします。遅延でもしてたんですかね?


 うちの地元のローカル線も、通勤時間帯以外は通常1時間に1本というゆとりダイヤで、他の線から乗り継ぐ際は鬼門とされていました。
 駅で永遠と待たされるは、蚊にさされるは・・・僕が地方ローカル線を好きになれないのは、あまり良い思い出がないからです。


 その後、上越線で高崎駅へ。新幹線で東京を経由し、千葉へ帰りました。


魔の山攻略を終えて


 今回は、谷川岳の登山をダンジョン攻略に準えて記事を書いてみました。


 元々アンチスポーツであった僕は、登山をスポーツだとは思っていません。旅・・というのも、僕には少し違うのかもしれません。


 じゃあ何かと聞かれたら、答えに困りますが、今回のような「冒険」だとか「ダンジョン攻略」だとかが一番それに近いような気がします。


 「次はあの山(ダンジョン)を登って(攻略して)みよう」と思うと、何だか子供の頃にゲームをやっていた時のわくわく感が蘇ってくるようです。


 結局、家から出てもゲーム脳な自分なのでした。

☆至仏山☆~憧れの地、遥かな尾瀬へ~

はじめに

 
 去る2016年9月10日、群馬県の尾瀬ヶ原にある至仏山へ行ってきました。
記念すべき最初の記事は、この年の4月から始めた登山の記念すべき10座目。登山を始めた時からの憧れの地、尾瀬に行ったお話です。


 2016年の4月、一年ちょっと前になりますが、思い立って登山を始めることになりました。
 元々アンチスポーツ・アウトドアであった自分が、何で登山なんかやろうかと思ったのかは、正直わかりません。
 もしかしたら、小さな頃見たあの景色のせいなのかもしれません。小学校の修学旅行で富士山の五合目までバスで登り、その時に見た南アルプスの山々があまりにも雄大であったのを今でも覚えています。


 何でこのタイミングでブログなんか始めるかというと、先日足を躓いて転倒し、足の骨にひびが入りました。つまり骨折です。自分の家で。
 ということで、このハイシーズン前に登山に行けなくなるという、登山者としては直視できない悲惨な現実が僕の前に立ち塞がりました。
 ああ、さらばアルプス、富士山、東北の山々よ。また来年出会えることを信じて・・・。 


 気を取り直して、今までの山行の記録を振り返ります。



尾瀬戸倉へ


 普段は公共交通機関を使って日帰りで登山に行くことが多いですが、尾瀬は山深いところにあるので、地元である千葉からの日帰りはほぼ不可能。


 金曜の夜から自家用車で、登山バスの出る尾瀬戸倉を目指します。初の車中泊からの登山ということで、若干の不安が募ります。


 仕事終わりに今回の相棒 HRS君と合流。関越道の沼田ICで降り、ファミレスで食事を取って、尾瀬戸倉に着いたのは、深夜3:00頃。眠れるのは実質2時間ちょっとというところでしょうか。


 夏の車中泊なんて地獄かと思っていましたが、外にでると肌寒いくらいで、深夜バスなんかよりよく眠れました。



 朝6:00頃の尾瀬戸倉。土曜日ということもあり、駐車場には前の夜からかなりの車がありました。さすが登山者の憧れの地、尾瀬です。



 HRS君にとっても憧れの地である尾瀬。朝の尾瀬戸倉は、外に出るとブルってしまうくらい肌寒く、彼はダウンを着こみます。頭にタオルを巻いて、やる気満々です。



 早朝にも関わらず、バス乗り場は込み合います。ここから鳩町峠というところまでバスで向かいます。



 鳩町峠のバス乗り場。ここから数分歩いたとこに今回のゴール地点である、鳩待峠の登山口があります。



 今回のコースは、鳩待峠を起点とする周回コースです。
 気を付けなければいけないのは、山ノ鼻からのコースは登り専用で、鳩町峠から登ってしまうと自動的にピストンをするしかなくなってしまうこと。まずは山ノ鼻を目指します。



鳩待峠




 AM7:00 鳩町峠休憩所に到着。ここから山ノ鼻までは1時間ほど。標高は既に1500mくらいあり、奥多摩とかだったら頂上でもおかしくない高度。9月上旬なのにやっぱり寒いです。
 コースを間違えないよう念入りに地図を確認するHRS君。




 憧れの尾瀬の入口で記念撮影。ついにこの地に立つことができました。
 さぞ経験者っぽく振舞いますが、登山歴たった半年。いっちょ前なのは格好だけです。



如何にも尾瀬といった木道を進みます。



 サラシナショウマとかいう高山植物です。たぶん。
 とりあえず写真に撮りますが、花の名前は全然覚えられません。



お馴染みのクマさんの目撃情報。



道沿いに沢が流れます。たかがこれだけのことですが、来てよかったと思えたり。



山ノ鼻





一時間かからないくらいで、山ノ鼻のビジターセンターに到着。もうここには帰って来ないので、見学して行きます。



 とりあえず、一際目を引くのはこの展示。確かにこんなのが目の前に現れたら、走って逃げたくなります。目撃情報も多数です。
 あれ、この場所が一番多くない?



 展示を一通り見たら、尾瀬ヶ原の散策に映ります。時間がないので、申し訳程度しかできませんでしたが。



 山ノ鼻の山荘前に張られたテント。テント箔はかなり荷物が重くなるらしいので、あまりやりたいとは思えません。まあ、いつか気が向いたら・・・。



さあて、尾瀬ヶ原のスピード散策開始です。地図を見ると30分程度の周回ルートを進みます。



 そうですこれです! 小学校の時に国語の教科書に載っていたのは、まさしくこの光景。美しい湿原に伸びる木道は、地上の楽園への道です。



 夢にまで見た尾瀬へ来られた喜びを全身で表現する自分は、既に三十路を過ぎています。



 小学校からの同級生であるHRS君も尾瀬に来られてご満悦の様子。



 これから登る至仏山も見えてきました。思ったよりもなだらかな山肌です。
 しかしながら、この特別な日に相応しい圧倒的快晴です。登山口を前に心が躍ります。



 トリカブト。とりあえずです。



至仏山登山開始


 そして登山口。なんやかんやで時間は既に9時前になってました。意気揚々と登山を開始します。二人とも元気なのは、この辺くらいまでです。



 序盤は水が流れる石と階段の道を進みます。登り始めから中々登らせてくれ、自分もHRS君も登るのと反比例して口数が減っていきます。


 


 樹林帯にうんざりしながら30分、あっという間に森林限界です。こんなに早く森林限界を迎えられるのは、豪雪地帯である尾瀬ならでは。この言葉を聞くと、何だか心が躍りますね。リミッター解除(限界突破)です!



 段々道が荒れてきます。それにしても水の流れてくる量が尋常じゃありません。沢登りですか?



 目の前の悪路を見て、嬉しそうに写真を撮るHRS君。今回の登山で、彼が“悪路フェチ”であることが発覚しました。
 そして森林限界を越えているはずなのに、まだしばらく樹林帯。
 やっとこさ、樹林帯を抜けたところで小休止です。あまり寝てないせいか、序盤でかなり体力を持っていかれた気がします。


 まあ、そういう時は少し後ろを振り返ってみましょう。



 僕たちの後ろに広がっていたのは、日本屈指の湿原である尾瀬ヶ原。そして彼方に聳えるのは、東北最高峰の日本百名山、燧ケ岳です。す・・すげー!
 東北最高峰と言っても、限りなく関東に近い為、東北か? と少しばかり眉唾な二つ名ではありますが、美しいその姿は、至仏山以上と言っても過言ではないのでは。
 至仏山に行くよりもアクセスがすこぶる悪い為、行くとしたら、遠い未来になるのでしょう。



 森林限界を越えて、見晴らしの良い道が続きます。ただし、夏の陽ざしは無情にも僕らの体力を奪っていきます。せっかく持ってきたし、ストックでも使うかな。



 自分が持ってきたストックを、一本HRS君にも貸してあげました。ストック初体験の彼は、この日ストックの有用性に衝撃を受け、すぐにストックを購入したといいます。



 悪路は続くよどこまでも。喜ぶHRS君。



 小さくなっていく尾瀬ヶ原を見下ろして、結構登って来たのが実感できます。



 ノリノリでポーズを決めるHRS君。自分が言うのも何ですが、彼は中々イケメンなので、普通にやったら痛いポージングでもそれなりに絵になります。
 ただし、間違っても僕らはそういう関係ではないので、悪しからず。



 ここまで来ると、頂上まであとちょっと。なだらかな階段が続きます。しかし、以外にこの階段が結構きつかったりします。



どんどん小さくなっていく尾瀬ヶ原と燧ケ岳。



至仏山頂



 11:20頃、至仏山頂に到着。コースタイムは3時間なので、まずまずと言ったところ。
 興奮して手を大きく振り上げるHRS君。憧れの尾瀬ということもあり、喜びも一入です。



 自分も記念に撮って貰います。こういうことができるは、誰かと来る利点ですね。今でも、知らない人に撮って下さいと頼むのが苦手なコミュ症な自分です。まあ、細かい注文もつけずらいですしね。
 ちなみにザックにぶら下げてるのは、千葉県が誇るゆるキャラ、チーバ君です。この青と赤の真反対なコントラストが何とも言えません。


 山頂はそんなに狭くはありませんが、人が結構多かったです。
 昼休憩する場所を確保し、持ってきたカップ麺をすすります。山で食べるカップ麺は最高ですが、たまには違った趣向も試みたい今日この頃。



 食べ終わったら、至仏山の頂上を満喫します。新潟方面(たぶん)を見渡す自分。



 とりあえず、なんかそれっぽい格好をしてみます。雰囲気が大事なんですよね。雰囲気が。



 尾瀬ヶ原と一緒にとって欲しいと頼まれ、HRS君を撮ります。アングルが気に入らなかったらしく、リテイクをくらいました。



 いつも行きたくもない登山に連れて来られるチーバ君。千葉県は47都道府県で一番山の標高が低い県だそうです。



 頂上を満喫したところで、帰りのバスに間に合うよう下山開始です。鳩町峠まで下りていきます。



 小至仏山に到着。道の途中にあるだけで、そこまでの感慨はありません。だけどせっかくなので写真は撮ります。



 雲行きが少し怪しくなってきました。もう下りるだけなので、雨さえ降らなければ、どうでも良かったり。



 登りと違い、ひたすらなだらかな道が続きます。後は下りるだけなので、元気いっぱいなHRS君。



 登山道に突然現れた湿原スポット。尾瀬っぽいので写真に収めようとするHRS君。それにしても、ザックにぶら下げた何かが気になります。



鳩待峠着



 15:00頃に鳩待峠へ到着。自分は我慢していたトイレに駆け込みます。



 バスの出発前に、売店で売っていた花豆ソフトクリームを食べました。今見ると中々いいですね。値段が。


 その後バスに乗って、車の置いてある戸倉駐車場に向かいます。疲れてすっかり眠りこけていました。




温泉と晩餐



 写真には残っていませんが、この後帰りに沼田で日帰り温泉に寄ります。自分にとって、登山後の温泉は、絶対に譲れない重要な儀式です。
 そこの露天風呂の景色があまりに良かったので、こっち方面に来たときは、次も寄りたいと思いました。



 温泉で汗を流したら、晩御飯です。HRS君にとっては、温泉よりもディナーの優先度が高いようです。沼田ではとんかつが名物らしく、彼が探したとんかつ屋で晩餐となります。


 沼田とんかつ街道のトミタに寄りました。「ブラ〇モリ」で寄った店ということで期待が膨らみます。



 今となっては、お互い何を頼んだんだか覚えていませんが、普通においしかったです。


 食事を終えた僕らは、関越道を東京方面に上り、千葉へと帰ります。
 天気にも恵まれ、この旅は僕の山行の中でも、特に印象に残っています。
 あの山域には、燧ケ岳、会津駒ケ岳など、数々の名峰がまだまだ沢山あります。アクセスは困難ですが、また機会があれば尾瀬ヶ原の散策と合わせて再訪してみたいです。